無題

 フリペ通信の運営を開始してから2周年を迎えました。当サイトの立ち上げ当初は
FBページでコツコツとフリーペーパー情報を発信し、昨年はウェブサイトを開設して土台作りを進めてきました。昨年の編集長便りでは「チラ見されるようになりました」と書きましたが、日々、アクセスが増え、少しずつ浸透してきたことを実感しています。これもひとえに制作者やフリペファンの皆様に応援していただいたおかげと、心より感謝しております。

 

2015年は変化の年!

 さて、昨年のフリーペーパー業界は変化の多い1年であったと思います。フリーペーパー業界をけん引してきたと言っても過言ではない「R25」が休刊してウェブメディアにリニューアル。1937 年に創刊し、その前身となる「資生堂月報」(1924年創刊)と「資生堂グラフ」(1933年創刊)を含め、90 年以上にわたって刊行を続けてきた歴史のあるフリーペーパー「花椿」も廃刊してしまいました。[i]

有名2誌の相次ぐ廃刊というなんとも寂しい話題が続くなか、昨年末には出版不況で書籍や雑誌の売り上げが過去最大の落ち込みになったという暗い話題も聞こえてきました。不況の煽りを受けて雑誌等の休刊ラッシュが続き、紙媒体の価値が見失われがちになってきている昨今、フリーペーパー業界も衰退の一途を辿っているのでしょうか。

フリーペーパーの魅力を発信しているフリペ通信としては、冷や冷やしながら業界の動向を見守ってきました。もちろん個人の力でフリーペーパー業界の動向をチェックするには限界がありますが、当サイトとしては衰退してきたかといえばそうでもない、むしろ活性化してきているのではないかという結論に達しました。「フリペ通信はフリーペーパー業界を応援しているからそんなことを言うのだろう」という意見はあると思いますが、そのような明るいイメージを持った理由を書いていこうと思います。

 

25誌以上のフリーペーパーが誕生

 当サイトの調査によると、昨年は25誌以上のフリーペーパーが創刊しました。全てを把握しているわけではないので、実際はもっと多くの冊子が生まれていると思います。“25冊しか”と考えるか“25冊も”と考えるかは各々の判断によりますが、インターネット上で自由に発信できる時代にあえてコストをかけて紙媒体で発信してみようという動きは確実に広がってきています。

「創刊したけどなかなか継続できない」ということはフリーペーパーあるあるの1つだと思います。そのなかで、アルビレックス新潟を応援するフリーペーパー「AlbiWAY」や静岡県下田市を中心に発行しているフリーペーパー「下田的遊戯」などが10周年という節目を迎え、メジャーではないけれど長年にわたってコツコツと発行されてきたフリーペーパーが注目されるようになってきました。1冊のフリーペーパーを制作するだけでも根気のいる作業のはずなのに、10年も継続して発行しているというのは本当に素晴らしいですね。今後も100号突破や節目の年を迎えるフリーペーパーはたくさん出てくると思いますので、当サイトは創刊したばかりの冊子を紹介するだけでなく、幅広いフリーペーパーを紹介して、制作者の皆さんを応援していこうと思います。

 

ネットプリントのブーム到来

昨年はネットプリントのブームが到来した年でもありました。ネットプリントで誰でも手軽に配信することができるということで、フリーペーパーを発行するハードルが下がり、気軽に制作者になることができる土壌が整ってきたと感じています。はしゃさん(@hasya31)や惠さん(@47kei)などが制作するイラスト系のフリーペーパーが主に配布されており、店頭には置かずにネットプリントで配信するだけというケースも増えてきています。

コンビニエンスストアさえあれば誰でも印刷することができ、なかなかフリーペーパーを入手することができなかった人たちが気軽にフリペを手に入れることができる機会も増えました。ネットプリントの登場によって確実に作り手と貰い手の距離は縮まったと思います。一方、制作者が収益を得ていないとはいえ、フリーペーパーを入手するために印刷代を払うことに批判があることもまた事実です。それは当然の反応だと思いますし、ネットプリントに関してはまだまだ議論の余地があると思います。この問題については別の機会に改めて書こうと思います。

 

アイデア光る!地域活性化を担う好事例

 書籍や雑誌等と比較してフリーペーパーはページ数や発行部数が少ないものが大半ですが、有料誌顔負けのクオリティの高さを誇る冊子も多く、昨年は特に商店街や地域団体が制作したローカルフリーペーパーのアイデアが光っていました。

例えば、福島県土湯温泉の若旦那5人が制作した「若旦那図鑑」にヒントを得て、山形県の県旅館ホテル生活衛生同業組合青年部が創刊した「やまがた若旦那」は「和」をテーマに12温泉地の16人の若旦那を紹介。表紙のセンターを決める「総選挙」を開催するなどユニークな企画を催し、多くのメディアに取り上げられました。“図鑑”と言えば、二階堂ふみさんのデビューのきっかけになった「沖縄美少女図鑑」など全国に広がりを見せる「美少女図鑑」シリーズが有名ですが、もしかしたら「若旦那図鑑」がブームになるかもしれませんね。

実は「地域の顔」を紹介するという企画は2015年の流行りだったようで、滋賀県の大津市北商工会が青年部の会員と店舗を週刊誌風の見出しと短い文章で紹介したフリーペーパー「ちょっとペッパー地元商売人図鑑」や東京都文京区に所在する5つの商店街が参加する本郷商店会がNPO法人街ing本郷の協力のもとで制作した「本郷百貨店」が相次いで発行されました。「本郷百貨店」は商店街振興キャンペーンの一環で発行されたフリーペーパーであり、商店街で働く人たちに光をあて、その人たち自身の街や商売に対する想いをショートストーリー仕立てで広く発信。「2015 年度グッドデザイン賞」を受賞しました。

フリーペーパーを発行する地域や商店街の活性化の一助を担った好事例だと思います。このような事例が増えていくことでフリーペーパーの魅力が高まっていくのではないでしょうか。当サイトとしては期待したいところです。

 

ニッチさが売りになる?

 フリーペーパーならではの自由で柔軟な発想は時に話題を呼び、インターネット上を中心に人気を集めることも多くなってきました。

代表的なものとしては長野県飯山市を中心とした奥信濃に住まうイケてるじいちゃん、ばあちゃんの姿をスタイリッシュに発信する「鶴と亀」や表紙デザインのインパクトで話題を呼んだ「ヘルス・グラフィックマガジン」、土木建築系総合カルチャーマガジン「BLUE'S MAGAZINE」などなど。ウェブメディアなどで紹介される機会も増えてきているので、目にしている方も多いのではないでしょうか。

最初のきっかけは冷やかしでもいいと思います。それでも、最近は「風変わりなフリーペーパーを面白く紹介しよう」という企画だけでなく、制作者の想いを伝えようとする動きが見られるようになってきました。

例えば、NHKラジオ第1で放送されている「ラジオ深夜便」には、灯台のマニアのための崖っぷちマガジン「灯台どうだい?」を発行する不動まゆうさんがゲストで登場。「灯台に恋して」というテーマで灯台の魅力を存分に語る姿に感動を覚えました。

制作者の情熱に触れることでフリーペーパーの魅力をさらに知ることができるのではないでしょうか。当サイトとしても、媒体の情報をただ紹介するだけでなく、制作者の想いや情熱を伝え、フリーペーパーの魅力を発信していこうと考えています。

 

フリーペーパーは我の強いメディア

 デザイン性やクオリティの高い“雑誌然”としたものやニッチな話題を紹介するフリーペーパーばかりに注目が集まりがちですが、紙ペラ1枚に制作者の想いが手書きで綴られたようなものでも立派なフリーペーパーです。

フリーペーパーは良い意味で「我の強いメディア」であり、制作者が自由に声を発信することができる表現の場になると思います。フリーペーパーを作ることに興味があっても、「クオリティの高いものを作れるのかな?面白いと思ってもらえるのかな?」と心配される方も多いと思いますが、サイズや形式、コンセプト等にとらわれすぎず、自由に想いを発信してもらえればと思います。

フリペ通信は、全てのフリーペーパーは同等の価値があり、それぞれの媒体に異なる魅力が存在していると考えています。そのスタンスを変えることなく、注目が集まるフリーペーパーばかりを紹介することはせず、1冊1冊の魅力を丁寧に伝えていこうと思います。

 

フリーペーパー専門店が相次いで誕生!

 2015年のフリーペーパー業界における最大の変化はフリーペーパー専門店が相次いで誕生したことです。フリーペーパー専門店と言えばOnly Free Paperが有名ですが、拠点は東京。足を運びたくても難しいという方は多かったと思います。そんな折に、月末の土日のみにオープンするフリーペーパーのお店「只本屋」が京都で開店、大阪でもはちみつとフリーペーパーのお店「はっち」がオープンしました。

関西エリアにフリーペーパーを取り扱う店舗が誕生したことで、普段はなかなか手に入れることができなかったフリーペーパー愛好家たちもフリーペーパーに触れることができるチャンスが生まれてきました。制作者にとってもフリーペーパーを配布することができる場所が増えたことは多くのメリットがあるはずだと思います。

フリーペーパー専門店の開店ラッシュに加え、「フリーペーパー展示会in沖縄」や「タダモノの祭典 全国フリーペーパー展in都城」が開催されるなど、昨年は多くのフリーペーパー関連イベントが開催されました。また、学生フリーペーパーの祭典「Student Freepaper Forum」は10周年を迎えるなど節目の年でもありました。

このようなイベントが開催されることで、フリーペーパー業界はさらに盛り上がっていくと思います。2016年以降も様々なイベントが開催されることを期待しています。
 

フリーペーパー業界は活性化傾向

 昨年のフリーペーパー業界についてフリペ通信的に考察してきましたが、2015年は転換期であったといっても過言ではないくらい目まぐるしい1年であったと思います。良い意味でも悪い意味でも多くの変化がありましたが、全体的に見て業界は活性化してきているのではないかという結論に至りました。当サイトは継続して業界の動向に注目していこうと思います。

 

メディアとしての価値を再発見

 フリーペーパーという媒体に対して広告収入をもとにして制作されるチラシやクーポン誌というイメージを持っている方は多いと思います。そのような媒体も当然フリーペーパーではありますが、あくまでも1つのジャンルに過ぎません。

世の中には企業が発行しているものから個人が自費で制作しているものまで多種多様なフリーペーパーが存在しています。ローカル系のフリーペーパーの間で「ガイドブックに載っていないような情報を発信する」という言葉がよくキーワードとなっていたり、前述したようなフリーペーパーならではのユニークな企画を考案し、画一的な情報や二次情報などを発信するメディアとの差別化を図る動きが顕著になってきています。

そのような部分に対し、フリーペーパーのメディアとしての価値の見直しと魅力を再発見する動きが出てきているのではないかと当サイトは考えています。

 

捨てる、その前に・・・文化的な価値を考える

 くすっと笑えるようなフリーペーパーばかりではなく、文化的な価値のある情報を掲載しているフリーペーパーもあるということを併せて書いておきます。

例えば、昨年11月に発行された福岡県北九州市が発行する「雲のうえ」には、直木賞作家・佐木隆三さん青春時代の思い出をつづった遺作となる原稿が掲載されました。前述の「灯台どうだい?」では、無人化に伴い現在は消滅してしまいましたが、かつて灯台に住み込み、灯りを守っていた灯台守(とうだいもり)たちへの歴史的な価値のあるインタビューが掲載されています。その他にも、著名人への貴重なインタビューや伝統芸能、伝統文化を紹介しているような媒体も多くあります。

冗談に思うかもしれませんが、当サイトとしてはフリーペーパーに掲載されていない情報はほとんどないと考えています。全てのフリーペーパーが捨てられることなく貯蔵されたとしたら歴史的な価値を有する図書館が出来上がると思います。昨年はフリーペーパー「雲仙と吉祥寺」が長崎県立図書館に永久保存されるという嬉しい話題がありました。図書館関係者の皆さま、各地域で発行されているフリーペーパーのアーカイブ化を検討してもらえたら嬉しい限りです。

フリーペーパーを読んだら捨ててしまうという方は多いと思いますが、それは本当にもったいない。個人の力では限界がありますが、当サイトもフリーペーパーを収集しているので、捨てる前にご一報いただければ嬉しいです。

 

3年目の目標は「耕す」

3年目をスタートするにあたり、「耕す」という目標を決めました。まずは土壌づくりをしっかりと行い、当サイトを訪れてくれる方に有益な情報を提供するためにコンテンツを増やしていこうと思います。一人でも運営はできるのですが、せっかくなら仲間を巻き込んで一緒に企みたい。そういう気持ちを込めてボランティアライターの募集も始めました。幸いなことに予想以上の反応があり、いくつかご縁をいただいております。もしかしたら面白いことができるかもしれないので楽しみにしていてください。

ウェブサイトでの発信力を高めていくと同時にコミュニティづくりも行っていきたいなと考えています。現在はオンラインが中心ですがオフラインでの企画も行うことができればと思います。とはいいつつ、3年目もマイペースに更新していきますので、変わらずに応援をよろしくお願いします。

 

2016.2.1

フリペ通信



[i]・・・「花椿」の月刊誌は201512月号をもって廃止されましたが、今夏からは季刊誌として刊行されるそうです。嬉しい話題です。(2月7日追記)